マーロン・ブランドは「八月十五夜の茶屋」で占領軍を翻弄する陽気な沖縄人通訳サキニを演じている。このキャラクターについて新城郁夫は著書『沖縄を聞く』において、脱男性化された曖昧な存在という。ブランド自身がまず、みずからの美しさを、その男性性を特殊メイクで隠す。沖縄という場所は日本とアメリカのホモソーシャルな軍事同盟の狭間で女性化されている。その場所に押込められた基地(軍隊)という極めてホモソーシャルな力学の働く場。そこへ迷い込んだ被植民者の「通訳という境界的存在」(新城郁夫『沖縄を聞く』)サキニ。イエローフェイスのサキニ、ブランドはこの頃32歳。

ブランドは10年後、「禁じられた情事の森」でペンダートン少佐を演じる。40を過ぎた素顔の彼に10年まえの繊細さは、もうない。アメリカのとある基地。書斎にこもりこっそりダビデ像の写真に見入る軍人と妻の関係は冷えきっている。ある日ペンダートンが馬で森に入ると、奥で若い兵士が裸で馬と戯れている。ペンダートンは動揺しそれに呼応するように馬が暴走を始めてついには落馬して、傷だらけで枯れ葉の上にひれ伏して突然号泣し、裸の兵士が彼をまたぐように歩いてゆく。泣くペンダートンは裸の兵士の後ろ姿を見上げる。

森、サキニ、ペンダードン、ブランド。ペンダートンのまなざしをサキニにむけてみる。恋におちたふたりのブランドは何を語り始めるのか。たくさんの物語の中で森は変容を促してきた。ふたりが出会う「森」は何を隠し何をみせるのか。




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