アメリカで退役軍人のインタビューをした後、ベトナム戦争時代に沖縄で青春時代を過ごした沖縄人男性に会う機会を得た。根っからの音楽好きらしい彼は、その時代を「古き良き時代」と冗談のように言って笑った。慰問演奏で、有名なミュージシャンが多く沖縄を訪れていたこともあり、たくさんのポップミュージックやロックをフェンス越しに聞き、米軍のクラブに潜り込んだ。もちろん、残酷な場面にもいろいろ遭遇して、アメリカ統治時代の不条理を体験した。70年代。黒人への差別や、銃を突きつけられて連行される軍人の姿も目にしていた。

インタビューのためにカメラをセットして、忘れ物を取りにその場を離れたとき偶然カメラが録画状態になっていて、画面に入り込んできた彼がピアノを弾き始める。あわててカメラのもとに戻り、マイクの電源を入れた。聞き直したけど、途中までノイズ混じりの録音だった。意図した録音ではないので使わないほうがいいかなと思ったけれど、同時にそれは古い音源を聴いてるような、とても美しいものにも感じた。

夜は集まった数人で酒を飲みながら、満月を眺めていた。こういう沖縄の居場所もあるのだと満足感にひとり密やかに浸りながら。




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