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リゾートホテルにもすぐに飽きて、僕は実家を訪ねた。徒歩十分。自分の部屋、学習机をあさっていると古いアルバムがでてきて、それは中学校の修学旅行のアルバムだった。持ち上げると、きちんと収められていなかった写真が二枚落ちる。どちらもYの写真だった。バスの中でカメラに向かってピースをしているもの。布団にくるまれて目を閉じているもの(寝ている彼を、みんなとふざけてるふりして撮ったのかもしれない)。

14歳の頃、修学旅行が終わり写真が現像され、僕は写真屋でもらったアルバムに写真を注意深く、時系列に並べた。たくさん撮ったように思えたけどアルバム一冊にも満たなくて、そのなかでYが一人で写っているのは二枚。その二枚をそっと抜き出して、ぼんやりと眺める。どちらもそんなにいい写りの写真ではなくてがっかりした。ある日学校が終わってみんなが部屋に遊びにきたとき、ひとりがアルバムを手に取った。修学旅行の写真だ、と開くと写真が二枚ひらりと床に落ちた。おまえ、Yがすきなの!と彼が言う。僕は返事に困り、まごついてしまう。ベッドに腰掛けていたYは少し困った顔で窓のそとに顔を向けた。すると、もう一人が、誰に頼まれたんだ?と聞いて、僕はここで態度を変えてはいけないと慎重に口をつぐんでみる。誰に?もう一度聞かれた頃に、Yが、やめなよ、と言った。

僕はアルバムを閉じて、その下にあった、さらに昔の写真を手に取る。小さな頃の写真が数枚。僕が生まれたばかりの頃、紫のワンピースを着た母に抱かれていた。1982年頃。写真の母は今の僕と丁度同じくらいの年齢だろうか。今まで気に止めていなかったこの写真になぜか惹かれて、僕は修学旅行のアルバムとともに、東京へ持ち帰ることにした。




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(C) 2012-2015 Futoshi Miyagi