西武門は戦前の那覇にあった遊郭街・辻の門で、ニシは沖縄語で北という意味だから北の門。門からの道は首里に続き、この歌は首里で働くおそらく裕福な男に思いをよせる遊女についてを歌っているらしい。ふたりで朝まで過ごして門で別れ、「今度は車で来てください」。門が二人を分つけれど現在の風俗街・辻には門はない。

この歌を英語に訳してみたくてまず日本語に訳する。「我ん」は「私」でも「僕」でもいいのだろうか。英語だと結局Iになってしまうけれど。門はゲートで車は…。僕はYナンバーの車を連想して、そうするとゲートの向こうに僕は入れないことに気がついて子供の頃憧れていた基地の中のアメリカについて思い出す。そこには、何かがありそうだった。沖縄に住んでいた高校生だった僕にとってのちょっとした救いのようなもの。上手く思い出せないけれど。

終戦直後、米軍統治下の沖縄を描いたアメリカ映画「八月十五夜の茶屋」で京マチ子が演じるロータス・ブロッサムは辻にあった料亭の女将がモデルになっているという。物語終盤「私もアメリカに連れてって」とロータスは言うけど大佐が断り、彼女が去るとそばにいた沖縄人通訳サキニが言う、「僕をかわりに連れてって」。沖縄人通訳はマーロン・ブランドが演じていた。誤訳する沖縄人通訳。日本語も沖縄方言もわからず自身の英語をも意図的に忘れてゆくアメリカ人ブランドがみせる強烈な向こう側へのあこがれに共感を覚えたことは、覚えている。




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(C) 2012-2015 Futoshi Miyagi